警察官らは、暴力団幹部甲が野球賭博をしたという賭博開帳図利被疑事件につき、客からの注文を書き留めたメモ類を差押目的物とする捜索差押令状により右暴力団事務所を捜索した。その際、居合わせた同暴力団組員乙が落ち着かない様子を示して立ち去ろうとしたので、警察官らは、呼び止めたうえ、乙が持っていたバックを開けてみせるよう求めたが、乙はこれに応じようとしなかった。そこで、警察官の一人が、バックのチャックを開けて、その中を見たところ、けん銃一丁が入っていたので、乙を銃砲刀剣類所持等取締法違反の現行犯で逮捕した。
この警察官の行為は適法か。
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一 本件事例において、警察官が、賭博開帳図利被疑事件に関する令状に基づく
捜索中に、居合わせた乙のバックのチャックを開けた行為が、令状に基づかない
捜索として、その適法性が問題となる。
1 この点、憲法35条は、何人も司法官憲の発する令状によらなければ、そ
の住居・書類・所持品について、捜索・押収を受けない権利を保障し、これを
受け、法も、捜査機関による捜索・押収に令状を要求している(218条1項
・令状主義)。
そして、一般的・探索的な捜索・押収は、本来自由であるべき市民に対し、
その自由を奪う不合理なものであるため、令状には、対象となる場所・物の明
示が必要である。
2 そこで、乙のバックに対する捜索が、甲の被疑事件に対する令状による捜
索といえるか、捜索令状の効果が、捜索場所に居合わせた第三者の携帯物にも
及ぶかが問題となる。
この点、捜索は捜査の初期段階で行われることから、捜索場所や物の明示
を厳格に要求すると捜査機関に無理を強いることになり、かえって捜査が糾問
化するおそれがあり、人権侵害の危険があり、また、実体的真実発見の要請を
も害するおそれがある(1条)。
そこで、ある程度の概括的な記載がなされている場合であっても、それが
それが合理的に解釈することにより、客観的に特定することが可能であれば、
明示の要請に反しないと解する。
そして、捜索場所に居合わせた者の携帯品についても、それが偶然に居合
わせたといえる場合には、一般的・探索的令状を禁止する令状主義の趣旨に反
し、それに対する捜索は許されないが、捜索の目的物がそこに存在する蓋然性
が高く、押収目的物を押収する目的でなされる場合であれば、それに対する捜
索も令状に基づく捜索として、許容される。
これを本問にみてみると、乙は、捜索場所である暴力団事務所を有する暴
力団の組員であり、乙であり、また「落ち着かない様子を示して立ち去ろうと
した」点においても、差押目的物であるメモ類をバックの中に隠している蓋然
性が高い。そして、警察官のバックに対する捜索は、押収目的物を押収する目
的でなされたものと考えられることから、バックに対する捜索も、令状に基づ
く捜索として、許されると解する。
二 そして、乙を銃刀法違反容疑で現行犯逮捕した点も、適法な令状に基づく
捜索中にけん銃が発見されており、犯罪は明白である。そして、乙の逃亡の危
険・乙による罪証隠滅の危険があるため、緊急性も認められる(212条1項
2項)。
したがって、乙の逮捕も適法である。
三 以上により、本件警察官の行為はいずれも適法であると解する。
以上
2007年05月19日
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